とりあえず共感さえしといたらいい

なんか最近あれやな。
いい自転車乗ってる人多いな。

分かる！
やっぱそうよな！？

中学生とか高校生ですらいいやつ乗ってるやん。
あんなん結構高いんちゃうん？

分かるわー。
高そうよな。
え、自分はどんなん乗ってんの？

普通のやつよ。
前にカゴ付いてて。

はいはいはい！
分かる分かる！
カゴあるやつな！

うん。

あれは？
変速は付いてんの？

え？
まあ、6段のがあるわ。

はいはいはい！
6段のやつな！
それな！
え、色とかは何色？

・・・銀。

銀な！銀な！
分かる分かる！
じゃあ

ちょ、ちょっと待って。
え、なにそのスタンス？

ん？
何が？

いや自分、なんか共感が最強やと思ってない？

え？
どういうこと？

いや、確かに話の入りは「高そうな自転車乗ってる人増えたなあ」やったで？

はいはいはい！

ちょっと一回そのはい連呼すんのやめて。

はい。

最初こそそうやったけど、途中からは別に普通の話やん。

ん？

いや、おれの乗ってる自転車なんかめちゃくちゃ普通やん。
普通の自転車の話で、分かる！とかそんなやつじゃないやん？

・・・はあ・・・？

え、なんでピンと来てないん？
だいたい共感するとかって、ちょっとマイナー気味なやつとか、普段なんとなく気づいてるけどわざわざ言わんほどのことについて言ったときやん。
おれの自転車に関しては分かる分かる！もなにも、めっちゃ普通のやつやねん。
逆に分からんわけないねん。

はあ・・・？

なんでここ分からへんねん！
一番ここを分かれよ！
なんやねん！

いや、なんかめっちゃ言われてるっていうのは分かるけど。

なんやねん、あのはいはいはい！って。
変速6段やって言うただけやぞ。

まあそうやけど。

ほんでそもそも、自転車に関してはそっちから質問してきたことに対しておれが答えてるだけやから。
こっちから分かってほしくて話してるわけでもないし。
共感とかそういうタイプの話じゃないねん。
ほんで「変速は？」ってなんやねん。
どこ広げてんねん。

なんか怒ってる？

ちゃうちゃう！
ちゃうねん！
え、なんでやろう？
なんでこんなに伝わらんのやろう？

おれも分かってあげたい、共感してあげたいけどさあ。

ちゃうねん。
まずその共感至上主義みたいな考え方が違うねん。

共感至上主義？

ちょっと待って。
え、難しっ・・・。
・・・じゃあ一回逆になってみよう。

逆？

えー、じゃあな、自分の家の玄関のドアってどんなやつ？

ドア？
どんなやつって言われても・・・。

そっちが困ってんのなんかちょっと腹立つな。
あれやん。
さっき散々おれにやってきてたやろ。
その・・・おれもホンマはこんなん別に気になってへんから難しいな。
あれよ・・・。
押すタイプ？引き戸？

ああ、そういうこと？
押すタイプ押すタイプ。

あっ、押すタイプ！？
それな！？
分かる分かる分かる！
え、じゃあ覗き穴とか付いてる？

付いてる！付いてる！
丸いちっちゃいやつ！

はいはいはい！
それな！
あるある！

あっ分かる！？

分かるわ、んなもん！
めちゃくちゃ普通やねん！

どうしたん？急に。

いや、なんでこんなもんでそんなにテンション上がれんねん。
押して開けるドアとかめちゃくちゃ普通やから。
これ分かるの何がいいねん。

うれしい・・・。

なんでやねん。

共感してもらえてうれしい・・・。

どこがやねん。

心があったか〜くなる。
なんでやろう・・・？

いや、ホンマになんでやろう？
こんなんでそんな気持ちになってたら、自分
「今日寒いな」
「な」
ぐらいの会話でもめちゃくちゃ楽しいやろ。

え、分かる！？

分かるかあ。