一生に一度のお願いはひとりの友達につき一回できる
古典の宿題やった?
やったで。
マジで!?
頼むっ!
見せてくれ!
えー。
お願いっ!
一生のお願いっ!
そんなん言って、一回見せたら次からも言ってくるやろ。
それはない。
マジでこの一回きり。
マジで一生のお願い。
絶対ウソやわ。
いやマジでマジで。
その、冗談抜きで。
友達ひとりにつき一生のお願いが一回できるとしたら、自分以外の友達の数考えてもまあまあできるし、そんなデカいことお願いしてもどうせ聞いてくれんし、自分との付き合いは高校限りな気がしてるから、今が使いどころかなと。
え、うそ?
「かなと」って、え?
めっちゃドライやん。
高校限りなん?おれら?
まあぶっちゃけ学校以外でよく遊ぶのって部活の友達とかが多いし、自分とはただのクラスメイトやん?
実際、休日とか放課後に遊んだことないし。
クラスではまあまあ仲良いけど、そこ止まりというか。
ちょっとやめて。
なんか悲しくなってきたから。
な?
だから頼むっ!
一生のお願いやから古典の宿題見せてくれっ!
・・・。
ちょうど頼むとしたらここやっ!て感じのタイミングやから!
今が!
まさに!
いや、ちょっとショックで無理やわ・・・。
え、なんでよ?
頼むって。
え、なんでそんな軽い感じで言えんの?
高校限りの付き合いとか言ってるし。
めっちゃドライやん。
ちゃうねん。
おれさあ、中学卒業して高校入ってから思ってん。
そう言えば中学時代に仲良かったけど今全然会わへんやつおるなあって。
それに気づいたら、会わへんようになる前に一生のお願い使っといたら良かったなあって。
中学の間に。
そう思ってん、おれ。
全然ちゃうことないやん。
そのまんまドライやん。
だってもったいないやん。
せっかくの一生のお願いやで?
ちゃんと数えたことないけど、多分おれ中学時代に使わんかったの20人分ぐらいあんねん。
そう思うとなんかなあって。
使えるときに使っとかななあって。
何なん、その考え?
え、自分友達のこと、一生のお願いを使える残機みたいな感じで捉えてんの?
いや、そんなことないよ。
全然そんなことない。
マジで。
でもさ、例えば今週の日曜までが期限のファミチキ無料券があったらさ、絶対日曜までにファミチキと交換しに行くやろ?
もうクーポン券や思ってるやん!
おれらのこと期限付きのクーポン券やと思ってる!
ちゃうやん。
あくまで人間が本体やん。
クーポン券付きの人間って感じやん。
こわっ!
え、ホンマにこわい!
ヤバいヤバい。
なに?クーポン券付きの人間って。
でも、それはそっちから見たおれもそうやから。
おれはそっちのことをクーポン券付きの人間やと思ってるし、そっちはそっちでおれのことをクーポン券付きの人間と思ってくれていいから。
お互い様の関係やから。
やめて。
おれそんなヤバヤバのやつじゃないから。
一緒にせんといて。
頼むっ!
マジで!
そもそも一生のお願いは絶対に使える設定は何なん?
そうとは限らんやろ。
めっちゃ断るやん。
おれにも感情ってもんがあるから。
そっちから見たらただのクーポン券付きの人間に見えてるかもしれんけど、クーポン券付きの人間にも感情ってもんはあるから。
え、じゃあどうしろって言うん?
ほんならおれにも一生のお願いをさせてくれ。
もうそっちはおれに一生のお願いはせんといてくれ。
これがおれのおまえに対する一生のお願い。
でも、おれの一生のお願いのほうが先に発動したから、そっちの効果は無効やろ。
遊戯王かっ!