イヌ飼いたいわあ。
あれ?
この前ネコ可愛いって言ってなかったっけ?
今はイヌやねん。
イヌの波が来てんねん。
イヌウェーブが。
なんで急にそんなイヌウェーブが来てんのよ。
この前川の土手歩いてたらさ、イヌの散歩してるおばちゃんを目にしたわけよ。
それでなんかいいなあって思ってん。
よう見る光景やろ。
なんで今更。
なんか散歩に行く口実になるやん、おれ自身の。
イヌの散歩に行くといいながらおれも散歩できるやん。
別にイヌ飼わんでも散歩行ったらいいやん。
なんかイヌがおってくれたほうがいいやん。
でもイヌ飼うのなんか絶対大変やで。
散歩じゃない気分のときも散歩行かなあかんねんで。
しかも、散歩以外にふつうの世話も大変やろうし。
確かにな。
そう言われればそうかもしれん。
自分にちゃんと面倒見れるというその覚悟があるか?
ちょっとオカンみたいなこと言わんとってよ。
今野、そこに愛はあるんか?
アイフルやん。
おれ今野ちゃうねん。
そんなん言われたらビビるわ。
やろ?
じゃあもうやめとき。
あれやな。
おれが散歩行きたいときだけ一緒に散歩してくれるイヌがおってほしいわ。
都合のいいインヌが欲しい。
都合のいいオンナみたいに言うなや。
そこに愛は絶対にないやん。
いや散歩中だけは愛が発生するから。
それは余計にアカン気がするわ。
色々と。
散歩が終わって別れるときは悲しみに暮れるから。
「ハチェー」って名前叫ぶから。
リチャードギアやん。
ああ、マジでイヌと散歩したい。
イヌと心通じ合いたい。
さっき都合のいいインヌがほしいとか言ってたやつがなに言ってんねん。
だいたい散歩終わったらイヌとお別れってどういうシステムやねん。
確実にお金が発生するやろ。
じゃあこうしよ。
おれもおまえも一人暮らしやん?
で、家も結構近いやん?
だから散歩は俺が担当するから、それ以外の世話はそっちが担当ってことにしよ。
半々で分担して一緒に飼おう。
どこが半々やねん。
おまえ自分が楽しいとこだけ取ってるやんけ。
それにあれやで。
雨の日でも散歩行かなあかんで。
え、そうなん?
そうやで。
散歩行かなイヌがストレス溜まってまうから。
マジかよ。
おれ晴れた日にしか散歩したくないねんけど。
おまえはもう絶対にイヌを飼ったらあかんわ。
ナメてる。
イヌ飼うことをナメてるわ。
そんなんでイヌと心通じ合うわけないわ。
確かに全然イヌ飼うことについて想像できてなかったわ。
甘かったわ。
こうやってイヌ飼いたいと言った子どもたちがお母さんに諭されて諦めていくんやろな。
そうやろ?
もうちょっとイヌについて勉強しよ。
まあ雨の散歩が嫌で諦めるんはちょっと想像以上に早かったけど。
もうちょっと粘ってきて、なんぼかラリーになると思ってたけど。
おれ、諦めるの早いねん。
こんなん言うんも変やけど自分歯ごたえないわ。
引き際が凄いもん。
イヌウェーブがサァ――って引いていったで。
あとがき