地獄、地獄、はい地獄ぅ。
はい、つぎー。
えー、地獄、地獄、はい地獄、地獄。
今日地獄行き多いなあ。
はい、つぎー。
よろしくお願いします。
はい。
おっ、はい天国ー。
えっ?
ん?
なに?
ぼく天国ですか?
うん。
おめでとう。
あなたは天国行きです。
あの、すみません。
ぼく生きてるときに地獄行きを約束したんですよ。
え?
あのー、友達と期末テストの点数競ってて、負けた方は地獄行きなって賭けてたんですよ。
だからちょっと天国行きだと困ると言うか・・・。
なるほど。
そういうことなんです。
はいっ、天国ー。
えっ、話聞いてました?
聞いてた聞いてた。
聞いた上でより天国行きが固くなったわ。
そんな友達とのしょうもない約束もちゃんと守ろうとする子はそりゃあ天国です。
はいっ、天国ー。
いやいやいや。
ちょっと地獄行きに変えれません?
約束しちゃったんで。
いや、友達もそんな本気にしてへんやろ。
ちゃんとぼくの履歴書読んでくれました?
読んだ上で天国よ。
それにだいたい第一印象で分かるから。
「よろしくお願いします。」
ってちゃんと挨拶した時点で履歴書読む前に天国行きっぽいなぁって感じやから。
閻魔、この仕事長いから分かんねん、一目見た感じで。
えー。
えっ、ホンマにちゃんと読みました?
読んだ読んだ。
ホンマに読んだって。
部屋に入ってきた羽虫とかも殺さんと逃す方向で考えるぐらい良い子やん、君は。
もうそういう細かいことも書かれてんねん。
でもぼく信号無視とかしたことありますよ。
それは人間の勝手に作ったルールやん。
あんま関係ないわ、それは。
それよりもこう、もっと生物全体に対する態度と言うか、命に対して慈しみがあるかどうかが重要と言うか。
でも信号無視ですよ?
下手したら事故とかに繋がりますよ?
まあでも、君の場合は夜とかのほとんど車走ってないときにちゃんと確認した上での信号無視やから。
分かんねん、そういう細かいことも。
ちゃんと書かれてんねん。
筒抜けよ?
良いことも悪いことも。
じゃあぼくの前のおじいちゃんはなんで地獄行きなんですか?
あんなに優しそうな顔してたのに。
あのおじいちゃん結構悪いことしてたから。
えっ?
そうなんですか?
そうそう。
そりゃあ、見た目は優しそうやったで?
でも閻魔は
『んっ?コイツ匂うな・・・』
って一目見て思ったわ。
閻魔の直感働いて。
ほんで履歴書読んだら、まあ地獄行きやなってぐらい悪いやつやったわ。
そうなんですか・・・。
優しそうな顔してても悪いやつなんかいっぱいおるから。
その逆もまた然りやけど。
・・・。
だから閻魔の死人を見る目は伊達じゃないのよ。
伊達に長くやってないのよ。
伊達に死人は見てねえぜ!なのよ。
でも、その、これでぼくが天国に行ったら友達との約束を破ることになるじゃないですか。
それはその、友達という生物に対して誠実じゃないじゃないですか。
だからぼくを天国行きにしたらぼくは嘘をつくことになって、嘘つきは地獄行きがふさわしい人間ってことになりません?
やめて、そんな難しいこと言うの。
そのパラドックスみたいなやつ。
これは地獄行きじゃないですか?
でもこれで地獄行きにしたら、別に約束を破ってなくて嘘をついてないことになるで?
そしたら良い人間ってことになって、天国が妥当やんってなるやん。
確かに・・・。
でな、そもそも天国か地獄かを決めるのは生前の行いからやから。
もう死んでるから、君は。
ここで約束破っても関係ないねん。
えー・・・。
えー・・・。
はいっ、そういうことで、天国行きぃー。
えっ、マジですか?
えー。
いや逆にこんなに粘る?
天国やで?
そこまで正直に生きようとする?
いや死んでんねんけどな。
・
・
・
ハッ!
夢か・・・。
そりゃあ流石に天国がいいわ・・・。